2021年11月26日(金)窪田空穂生家将棋教室学校訪問

窪田空穂生家将棋教室学校訪問として、プロ棋士の石川陽生七段、勝又清和七段、田中悠一五段が木曽楢川小学校へ来られました。

その時の様子が学校ホームページに掲載されています。

 

ここではそのレポートを許可を得て時系列に転載させていただきました。


本物の空気を吸う将棋教室⓵棋士紹介

11月26日(金)、日本将棋連盟棋士をお迎えして「本物の空気を吸う将棋教室」が行われました。木曽楢川小学校では3年目になる教室です。

石川陽生7段(東京都新宿区出身 (故)高田丈資七段門下)ニューヨークをはじめ、海外にも将棋普及を精力的にすすめておられます。また松本市の窪田空穂記念館生家で行われているで空穂生家将棋教室の講師です。教室は20年にも渡る記念館の人気講座です。(県内はもちろん、岐阜県、山梨県や群馬県からも参加者が集うほどです)

今回も11月27日(土)に行われる空穂生家将棋教室のために来県。その前日を利用して学校訪問をしてくださいました。

田中悠一5段(長野市出身 (故)関根茂九段門下)。長野県期待の棋士です。昨年に続き、本校に来校。空穂生家将棋教室でも人気の先生です。石川先生と一緒に空穂生家将棋教室の前日を利用して学校訪問をしてくださいました。

この2名の棋士で将棋教室を計画していたところ、石川先生から「木曽楢川小学校の子どもたちは、目を輝かせている。木造校舎や漆器を使ったおいしい給食に、町並みも美しい学校。ぜひ勝又先生も木曽楢川小学校に呼んでいただけないでしょうか」とお話がありました。お一人の棋士の先生でももったいないのに、3名ものプロ棋士の先生方をお迎えすることができ、私たちは幸せです。

勝又清和7段(神奈川県座間市出身 石田和雄九段門下)は著作や講座、名解説でも有名で、「教授」とも呼ばれています。そして、勝又先生は本当に東京大学の客員教授でもあります。

こんな素敵な先生方をお迎えして、3,4、5校時と「将棋の楽しさ、面白さ」、そして「プロ棋士の醸し出す本物の空気」を吸うことができました。

 


本物の空気を吸う将棋教室②模範対局

将棋教室はまずプロ棋士同士の模範対局から始まります。

日本の誇る伝統文化である将棋。礼に始まり、上位者が駒箱を開け、盤上に40枚の駒が美しく散らばります。

上位者が王将を人差し指と中指でつかみ、ピシッと音を立ててマス目の真ん中に置きます。それを見てから、相手が自分の駒を並べていきます。駒の並べ方には「大橋流」「伊藤流」とあるそうです。先生方の並べ方は「大橋流」。ぴんと張りつめた雰囲気の中で、一枚一枚気持ちをこめて、40枚の駒が美しく並べられていきます。みているだけで心が洗われるような、とても素敵な時間です。

駒を並べ終わると、上位者は盤上に余った「歩兵」を駒袋に大切に入れます。それから、駒箱に収めて、盤の下にそっと置きます。将棋の道具を大切にされている棋士の所作にも心が惹かれます。

そして、もう一度深々と礼をします。これは「私はこれから正々堂々と戦います」という意味が込められているそうです。


本物の空気を吸う将棋教室③ 振り駒

  

将棋の先手、後手はジャンケンで決めません。上位者の「歩」を5枚とって、両手の手の平を丸くして駒を勢いよく振ります。そして、駒を畳の上にパッと振ります。「歩」が多ければ上位者の先手に、「と金」が多ければ相手の先手となります。

棋士のお話をお聞きして、代表の子どもが石川七段の歩を5枚とり、振り駒に挑戦しました。めったにできない経験です。

振り駒の光景にも日本の伝統文化の美が感じられます。

なおプロ棋士の場合は、記録をとる棋士の卵(奨励会員)がするそうです。またあらかじめ先手、後手が決まっている対局もあるそうです。


本物の空気を吸う将棋教室④ 模範対局

振り駒が終り、子どもたちが見守る中、いよいよ模範対局が始まりました。ストーブの音だけが静かに聞こえる教室で、プロ棋士の指す駒音が心に響きます。

子どもたちは将棋がまだ分からなくても、棋士の対局姿に思わず背筋を伸びるのです。

 

 


本物の空気を吸う将棋教室⑤ スペシャル企画「プロ棋士と一手指す」

いつもの学校訪問では模範対局の後に棋士の指導対局や入門コーナーになりますが、今回はスペシャル企画として、子どもたちが一人ずつプロ棋士の先生方と1手ずつ指す体験をさせていただきました。(少人数ならではのメリットです!手厚いご指導を受けることができます)

はじめに棋士の先生の前に座り、棋士のお顔をみて「お願いします」とあいさつをします。次に自分が好きな一手を指します。そして、棋士の先生が次の一手を指してくださいます。最後に「ありがとうございました」とあいさつをして、次の友だちと交代します。

           

子どもたちはどきどきしながらも、わくわくする気持ちが勝ります。さきほど拝見した棋士の模範対局を真似て指すことができました。一生の思い出となったことでしょう。子どもに続いて、先生方も一緒にチャレンジしました。

 

 


模範対局で使われた盤駒です。

翌日の「窪田空穂生家将棋教室」でも使われています。

二寸盤の蓋には谷川9段の揮毫。

駒は東世作 水無瀬(薩摩材 杢 彫埋駒) まるで木の宝石のようです。

 


本物の空気を吸う将棋教室⑥ 目を輝かせながら


勝又7段の入門教室です。将棋の駒の複雑な動き方をとても分かりやすく、そして覚えやすく教えてくださいます。

また外国の将棋の駒を子どもたちに実際に見せて、日本の将棋の駒と似ているところ・違うところも教えてくださいます。お話がとても楽しくて、子どもたちは引き込まれるように聴いていました。(教室が終った後で1年生の女の子が「わたし、こまのうごかしかたが わかった」と担任の先生にうれしそうに話していたそうです!)

将棋を指せる子どもたちは、プロ棋士の先生から直接教えていただきます。棋士が一度に3人相手に教ええることを3面指しというそうです。もちろん一度に5人相手(それ以上も!)に指導されることもあります。

びっくりすることは将棋を指した後に、一人一人の大切な局面にもどしてアドバイスをしてくださることです。

子どもたちは目を輝かせながら、将棋に夢中になっていました。

プロ棋士の学校訪問を支えてくださる地元塩尻支部アマ強豪の新井さん(左)と黒岩さん(右)です。

新井浩実さんは、詰将棋の世界でも活躍されています。プロ棋士の先生方からも「新作できましたか?見せてください」と声をかけられるほど有名な方です。

新井さんが運営した平成24年7月に松本市で行われた詰将棋全国大会では愛知県から「藤井君」という少年が参加していました。

新井さんは詰将棋界での功績が認められ、平成26年には、「門脇賞」を受賞されています。

もちろん指す方の将棋も強く、平成29年と令和元年に「長野県将棋選手権」で優勝、「信州王将位」となっています。

 

黒岩泰さんは大人になってから将棋が好きになり、勉強して強豪になりました。

平成29年11月に『囲碁将棋チャンネル お好み将棋道場』でプロアマ対局に出場しました。プロ棋士と飛車落ちで対局し見事勝利!お茶の間を沸かせました。その時の解説が石川先生でした。

 

新井さん、黒岩さんともに棋士の学校への将棋の普及を、誠心誠意応援してくださっています。地元アマの皆さんの協力なしには、この教室は運営できません。ありがとうございます。

 

 


本物の空気を吸う将棋教室⑦ 休み時間にも

おいしい給食を食べ終えて、お昼休みにもたくさんの友達(希望者)が将棋教室に集りました。

さすが希望者の子どもたち、なかなかの腕自慢がいました。将棋が本当に好きなお子さんたちで、真剣な対局姿からわかるように、とても集中力があり、これからもっと強くなるそうです。


本物の空気を吸う将棋教室⑧ 思い出づくり

「模範対局はみているだけで、緊張するほど、迫力がありました。プロ棋士はすごいと思いました」

「テレビでみたことがあるけど、目の前で模範対局がみられてうれしかった。駒を指す手がかっこよかった」

「将棋は日本の伝統文化で、あいさつとか駒を大事にしていることがわかりました。わたしも心をこめてあいさつしたいです」

「いつもはお兄ちゃとしょうぎをさしているけど、きょうはプロの先生としょうぎをさせてたのしかった。お兄ちゃんよりうんとつよかった」

「自分が思ってもいない手をさされた。プロ棋士はすごかった」

「将棋教室は楽しかった。クラスで将棋がブームになりました。また来てほしいです」

「いい将棋盤でプロ棋士の先生と指せて緊張したけど、すごく貴重な経験ができました。ありがとうございます」

「本物の空気を吸う将棋教室」の目的は、一芸に秀でる将棋プロ棋士の専門性や精神の高さを感じ取るとともに、日本の伝統文化である将棋を通して礼儀や礼節の大切さを学ぶこと。そして、来校されるプロ棋士の先生の生き方の素晴らしさを体感することにあります。また、棋士の先生方は「『強くすること』よりも『楽しませること』が大事です。子どもの頃の思い出が楽しくなくてはならない。思い出づくりが私たちの大事な仕事です」と教えてくださいました。

 子どもたちの生き生きとした感想から、この教室の成功が伝わってきます。 

 石川先生、勝又先生、田中先生、木曽楢川小学校の子どもたちに日本の伝統文化である将棋の楽しさ、面白さ、棋士のすごさを教えてくださり、本当にありがとうございました。今度、将棋を教えていただける機会を子どもたちはとても楽しみにしています。どうぞ、よろしくお願いします。