2019年11月8日(金)
気持ちのよい秋の朝。
田中小学校の校庭では、立派なイチョウの木が鮮やかな黄色に染まり見頃を迎えていました。
台風19号では周辺道路に被害があり、いまだに通学路が寸断されているなか、児童のみなさんはお家の方、地域の方に見守られながら元気に学校に通っています。
毎年夏と秋に、松本市・窪田空穂記念館横の空穂生家で、プロ棋士による大きな将棋教室が開催されます。
ゲストのプロ棋士の先生方は、その将棋教室前日に県内各地の小学校へ将棋の指導をしてくださっています。
今回は東御市立田中小学校へ。2年ぶり2回目の訪問です。
9時から始まっていた将棋の授業。
5年2組全員と1組の半分のみなさん、計42名対象。
「田中先生!来てくれてありがとう!待ってたよ!」
2年前に田中五段に教わった子たちが到着を待ちわびていました。
コートを脱ぐなり飛び込むように指導に入られた田中五段。
勝又六段は将棋の最新戦法に詳しく、将棋界では「教授」と呼ばれています。
実際に東京大学で授業を受け持っているので本当に「教授」です。
今回は初心者の子どもたちを担当し、駒の動かし方から丁寧に教えてくださっていました。
パソコンを駆使して説明をしたら、即実践!
「指導棋士」とは、将棋を教えるプロ。
野島先生は元奨励会三段のとても強い先生。都内、関東の将棋教室で初心者から全国アマチュア大会上位者まで幅広く教えていらっしゃいます。
体が大きくてちょっと怖そう?? いえいえ。とても優しい先生です。
指導対局のかたわら、友達同士の対局のアドバイスもされる野島先生。こどもたちと目線をあわせてお話をしてくださいます。担任の先生も楽しそう。
日本将棋連盟塩尻支部の松本先生。
松本先生は長野県内各地で将棋の普及・指導をされているアマチュアの先生です。
プロ棋士の先生方にも信頼され、学校訪問ではマネージャー的役割もされています。
真ん中奥は、3年1組の堀内萌先生。
堀内先生は高校生の時に将棋の全国大会に出場し、上位入賞を果たした実力者。
高校時代、勝又六段、田中五段のご指導を何度も受けました。。
自分が教わったプロの先生方の指導を、児童のみなさんにも受けてもらえることをとても喜んでいました。
堀内先生手作りの大盤とマグネット駒。
勝又六段の初心者講座で大活躍していました。
1回目の授業は10時25分まで。
休み時間になんと!!「避難訓練」!聞いてないよー!
11時20分から12時20分までたっぷり1時間、勝又清和教授による「将棋の歴史講座」及び質疑応答。
5年生84名が対象です。
東京大学でも実際に行われている講義ときいて、児童のみなさんの背中がちょっと緊張しているように見えます。
世界中に100種類くらい「将棋」があります。
「さて、将棋の生まれた国は?」三択問題で圧倒的に手が挙がったのが「インド」
「正解です!」
・世界地図で世界の将棋の紹介。
・将棋の駒がなぜ五角形なのか。
・とった駒を使える「持ち駒再使用」は日本だけ。
・駒の持つ意味は?
・昔は「金」「銀」はもちろん「香(香辛料)」「桂(肉桂)」は宝物だった。
・将棋は戦いではなく宝物、よいものをとるゲーム。
・徳川家康は将棋・囲碁好き。
・1612年に初代名人が誕生「大橋宗桂」。
・江戸で大流行だった将棋は参勤交代で日本中に広まった。
・・・などなど中身の濃いお話。
東大生の講義を、5年生が身を乗り出して聞き入っている姿に驚きました。
おまちかねの質疑応答。
一番初めに手を上げたのが、塩尻支部の松本先生。
「チャトランガがあったことの具体的な証明が見つかったのはいつ頃のことなんでしょうか」
勝又六段「チャトランガの具体的な年代はわかっていないのです。もしかしたら紀元前かもしれないし、行われていたかも怪しい、それくらいわかっていないことなのです」
ひとつ質問が出ると次々みなさんからの質問が飛び出しました。
「先生方が将棋を始めたきっかけを教えてください」
田中五段「小学5年生の少し前。学校で流行っていたので」
勝又六段「小学3年生で回り将棋を覚えて、小学5年生から本格的に指すようになりました。みなさんも好きなものを一所懸命やってください」
勝又六段が余裕を持って答えたのはここまで。
ここからすごい質問が次々に飛び出しました。
「世界に将棋がたくさんあるとのことですが、アフリカには将棋はないんですか?」
勝又六段「(講義に使った世界地図の将棋分布図を見て)・・おや?ほんとだ。ないねぇ・・」
「昔の日本の将棋の中で一番強い駒は何ですか?」
勝又六段「中将棋の"獅子”ですね。一度に2度動かせるので。日本の将棋はいろんな工夫をしたんですね」
このほかにも、たくさんの質問が飛び出しました。
「動き方は誰が決めたの?」
「将棋の駒はなぜ二文字なのですか?」
「将棋の駒の文字は”宝物”の意味があると知りました。なぜ宝物を持たせたの?」
「世界の将棋の中で一番弱い駒は?」
「"歩”は、何の宝物なのですか?」
するどい質問の数々。
勝又六段は、講義に長野県の話も混ぜてくださったのですが、「長野県の森林の占める割合は?」にみなさんが元気よく「8割!」と、即答したのでとても驚いていました。
勝又六段「聞く態度も素晴らしいみなさんでした。小学校での講義は久しぶりで楽しかったですよ」
お楽しみの給食の時間です!
田中小学校は自校給食。あたたかくておいしい~~。
毎日おいしい給食をしっかり食べているから、脳も働いてするどい質問ができるのかな?
わずかな時間に「先生!一局お願いします!」
あっという間にクラスメイトが集まって観戦。
対局中はまわりは静かに・・・声を出してはいけません・・。
廊下に張り出された学年別「にがてなやさいしらべ」を、田中五段が熱心に見ていました。
田中五段「田中小学校のみなさんは、ナスがにがてなんですね。・・・おいしいのに・・・」
ちゃっかり田中五段と手をつないで仲良くなっている男の子。
午後2時から再び将棋の時間です。5年3組全員と1組の半分の児童のみなさん。
指導将棋の前に、プロ棋士による「模範対局」
プロの所作を学びます。
プロが使う本物の高級駒を、特別に持たせていただきました。
「すごい!すべすべする!」
「きもちいい!」「プラスチックと全然違うね」
大興奮のみなさん。
模範対局が始まるとプロの醸し出す本物の空気に気圧されたように静かになる室内。
駒音だけが響きます。
指導対局が始まりました。
勝又六段は駒の動かし方からリレー対局、そして実践!
ちゃんとついていってるみなさん。優秀です。
誰の力も借りないで、自分で考えて一手を指す。集中して盤面を見つめるみなさん。
楽しい時間はあっという間。
みなさんの元気な「ありがとうございました!」の挨拶は先生方のエネルギーになりました。
「先生、また来てね」
「きっとだよ!」
別れを惜しむみなさん。先生方も別れがたかったようですよ。
校長室で。
将棋教室のご報告をされるプロ棋士の先生方。
田中小学校のみなさんのことをたくさんほめていただいて、荻原敏行校長先生がとてもうれしそうでした。
また田中小学校での将棋教室が開催されますように!